遺伝学と発酵工学

山口大学工学部

赤田 倫治

 

 皆さんは生物工学コースの学生さんでしょうから,応用的な科学にも充分興味があると考えてよいでしょうか。工学的な考え方には我々の生活と直結した感覚が存在すると思っています。その感覚は“人の役に立つ”という感覚かもしれません。どんな研究をやるべきかを役に立つという側面からいつも考えたいと私は思っています。

ちょうど皆さんは将来何をしようかと考えている時期だと思います。そこでまず,何を考えるべきかを,過去から現在を眺め,未来をみながら考えたいと思います。あたりまえのことですが,人類の歴史数千年のうち,今日の科学の発展はほんの100年ぐらいのことでしょう。科学の発展が100年のうちに素晴しい世界を作り上げたのに,問題点も次々に現れています。その問題は,地球全体に影響をするものになっています。このような問題から自分の仕事の位置付けをするとやるべき仕事が見えるかもしれません。

このような問題は,大体解けていないし,問題が大きすぎて身近ではないと感じられるかもしれません。それが,問題の抽出を困難にしますし,わかりやすい問題を解きたくなってしまいます。しかし,問題の扱い方や捉え方が研究意欲に関係するので,大きな問題を解こうと考えて欲しいと願っています。

次には,科学の流れ,特に遺伝学の流れを説明します。これは単純に,私の好きな遺伝学者の仕事を紹介します。研究はテーマも重要ですが,問題の解き方が重要です。問題を解く方法がなければ解けません。往々にして,新しい方法を作れば,誰も解いたことがない問題が解けるはずです。方法とは学問分野のことであるし,おもしろい個性的な人間が問題を解いてきたことをお伝えします。

最後に,私の仕事の一部を紹介します。パスツールがワインの研究から発酵を科学にしていったように,日本酒の研究から,何ができるのかを解説します。発酵に大きな問題を解く可能性を感じています。

どのように“役に立つ”から考えていくのか,この講義が皆さんの役に立てばよいのですが。